鍼灸院のブログ

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カヌーでインドネシアから日本へ

グレートジャーニーという壮大な企画があります(TV朝日で何回かに渡り、放送されてましたね)。

グレートジャーニーはモンゴロイドがかつてアフリカからベーリング海峡を渡り、南アメリカ大陸へと移動した過程を、自転車・徒歩・犬ぞり・カヌーなどの手段で逆送するという壮大なプロジェクトです。

探検家の関野吉春氏。一橋大学探検部に在籍中アマゾン川を下降。その際に外からの文化が遮断されているマチゲンガ族の村を訪れ感銘を受け、その後に何度も訪問。彼らのためにできることは、と医師の道を志し、再び医学部へ入学。それから数年後のこのプロジェクトなのです。

今から20年ほど前、いろいろな理由で南米にあこがれ、大学の探検部に入部しました。その際に関東学生探検連盟という関東の大学探検部が集まるイベントがあり、私が入部する1年前にその関野氏がグレートジャーニーの構想を発表したらしいのです(私が入部してからは、雪男を探すとかそんな企画が印象に残っています)。

インターネットが一般にまだ普及し始めた時代。中・南米の情報(本)など非常に少なく、多くのバックパッカーにとっても、南米は最後にとっておく、といった印象が強かった時代です。

グレートジャーニーに関しては、上野の国立科学博物館で6月まで展示をやっていて、これは何も知らなくてもなかなか楽しめる展示だと思います。
http://gj2013.jp/

さてその展示の中で、日本人のルーツを辿るルートが4通りくらいあり、その中の1つのルートがインドネシアから台湾などを経由海を渡って日本にやってくるルートなのです。


それを再現するというのが今回の企画で、航海するためのカヌーを作る過程を東中野の映画館で上映しており、昨日が上映の最終日だったのです。
http://bokuranocanoe.org/

カヌー作りから開始。カヌーを作るための木を切る斧(?)を作る所から自力で始め、近代的な道具を使わないことが条件。磁石で砂鉄を取り、集めた砂鉄を鋼に加工するためのふいごなども手作り。

そして手作り道具を持ってインドネシアに材料を集めに行く。直径1.5mで高さが7mの木を探す、中が腐っていない木を探す、ドリルやのこぎりを使わないで船を作ってくれる船大工を探すといった過程。その過程が過剰な演出もなく、淡々と進められ、非常に根気のいる作業であるが、比較的ゆったりと進んでいく感じが、見ていてとても心地よい。

また日本では、植物から縄をつくる作業を進める学生グループ。それらをやっていた年配の方の家を訪問し、作り方を教わっている過程。
食べ物を作る学生グループ。トチの実から灰汁を抜いて、トチ餅を作る過程。それを習いにやはり年配の方の所を訪問する。材料のトチは学生が通っていたキャンパス内にあったり、教わる家も東京都内のおうちだったりするのです。

印象的だったのは、全ての作業が今ある道具や機械を使えばもっと早くできるのに、それをあえて既存の道具に頼らずに行う。大変な過程のはずだけど、関わっている関野さんや学生さん達は皆いい顔をしていたのです。その過程を楽しんでいたというか。

映画終了後(もう22時を回っていたのですが)、関野氏とカメラマンさんのトークショーがありました。話しがあまり映画と関係ない話しでそれまくりだったのですが。その中で印象に残った話は、関野さんいわく、電車とか乗ってて皆顔が楽しそうじゃない、と。
映画を見てると、このプロジェクトに関わってる人は皆楽しそうなのです。
ものづくりが大切ということか、効率的であることが必ずしもいいことでないということか。

関野さんが学生のときは、正月休みの寮で寮母さんがいなくなってしまい、コンビニもなかったので、正月は食べ物がなかったとかの話し。
私が学生のときはコンビニはあったけど、南米に関する情報なんて集めるのに苦労した(そのために探検部に入ったというのもある)。今は情報あふれまくりで、それが却って…なんて話しも出ていました。

学生時代からすごいなー、と思っていた関野さんに初めてお眼にかかったのですが、自分がやりたいことをただやっている、それが楽しい。ものすごくシンプルなお人でした(もちろん頭は相当いいのでしょうけどね)。

関野さんの話で面白かった話を最後に1つ。小乗仏教を信仰している所で、あらゆる欲を捨て去るというお寺があって、そこを訪れた話し。物欲、性欲も捨てて、食べ物も托鉢で与えられるものを食べるのみ。
関野さんは尼寺みたいな所に通っていたそうです。
その僧(?)に関野さんが、「何か好きな食べ物は」と聞くと、「与えられたものは何でも美味しい」と答える。
関野さんが考えて、「こういうことをやっていて自分が特別な人なんだ、と思う欲はないのか」と聞くと、”ない”と答えればいいのに正直に、「それだけはどうしても捨てられないんだ」と答えたそうです。

久しぶりに興奮してドキドキしました。私も旅がしたくなりました。